18カラ~ノ

その10

地方で暮らす「若者」ってどうなの?~後編~

2019.02.05
<18カラ~ノ、>では、10代後半の若者が抱く将来像への理解を深めるために、昨年の2月に首都圏在住の若者に対して行ったインタビューに続き、福井に暮らす若者へインタビューを実施しました。

(実施概要)
  • 2018年9月21日(金)、22日(土)の2日間
  • 17才から20才までの福井に暮らす若者へインタビューを実施
(インタビュー対象者)
  • 福井出身で地元の大学へ通う大学1~2年生の男女
  • 同じく福井出身で地元の高校を卒業して就職した社会人1~2年目の男女
  • 福井出身で地元の高校へ通う高校3年生の男女
計3グループへインタビューを実施

<18カラ~ノ、>では、若者へインタビューをするにあたって都市と地方の意識の違い情報格差の影響ということに強い関心がありました。<18カラ~ノ、>の運営メンバーも地方出身者が多く、首都東京へ出てきたことで手にしている現在の生活への肯定感がある一方で、自分達よりも下の世代の若者達が、同じように大都市圏、特に東京への進出に対する憧れがあるのか、気になるところでした。

そこで、首都圏在住の大学生達が感じていた“将来への漠然とした不安”や、高校生達の“将来が不安だからこそのシッカリした準備意識”といったものが同じように地方でも共通してあるのか、インタビューを行うことにしました。

地方の特性をより際立たせるために、地方都市出身で地元に進学や就職をした若者を対象とし、今回は働く若者の意識も知りたいと思い、高校卒業と同時に就職をした若者をグループに加えました。

福井の若者にインタビューした理由

福井を対象に選んだのは、多くの地元企業があり経済的に自立していること、一方、近隣に「金沢」という「福井」より大きい経済圏があり、さらに「関西圏」「中京圏」「首都圏」といった大都市圏への交通網が整っており、若者にとって様々な選択肢があることがユニークな場所だと考え、選択しました。また、3年連続で全47都道府県幸福度ランキングNo1に選ばれていることも、地方と言いながらも非常に成熟した地域と考えたからです。 *「一般財団法人日本総合研究所」調べ


若者らしいチャレンジ精神や現状打破したい意欲も、もちろん高い

現状への不満としては、ずっと福井に生まれ、実家暮らしを続けることへの漠然とした「物足りなさ」から、実家を離れて一人暮らしをしたいと希望を持つ大学生も見られたが、一人暮らしの手間を考えると実家暮らしの気楽さを選ぶという声もあった。

県外で暮らしてみたいという意向は多くあげられたが、その最大の理由は上記の変化が乏しい現状への漠然とした不満が大きい。その場合も、希望にあがるのは「金沢」など近隣都市であった。

保育園から高校までずっと1キロ圏内で生活してきた。だから近場過ぎて嫌過ぎた。福井でなければどこでもよかった。ひとまず福井を出たかった。オーソドックスに金沢とか。自分より下の子がまだいて結構お金がかかる。だから親とケンカし、負けて福井の大学を選んだ。

小中高は全部家から見える範囲にあった。だからその圏内からは出たいと思っていた。今は大学が遠いので。ずっと実家にいるより1人でやってみたい気持ちもあって一人暮らしをしたいのだが、県外に出たいという意味合いではない。

出て行く友達がいてもそれはそれ。自分は自分。友達が出て行くことは別に自然なこと。裏切られたとか戻ってくればいいのにとかは全然思わない。

東京はたまに遊びに行くからいいのであって、毎日いたらそれが日常になってしまう。こちらから行くから非日常なのであって向こうに住めば日常になるから。そういうプレミアム感があるままがいい。田舎者の自分達が住むべき場所ではない。場違い。

薬学部が県外にしかない。でも 資格をとったら戻ってきたい。お米がおいしいから。あと、あまり 人が多い所は苦手。修学旅行で都会に行ってみて人の多さに辟易した。 田舎が好き。家も都会の家はすごく縦に長い。私は平屋が好き。うちも2階建て。大きい土地を買ってデカい庭が欲しい。そのためには福井がいい。


首都圏と比べた意識の違い

これら福井在住の若者達の声に耳を傾けることで感じたのは、「幸福」の尺度の違いであった。東京を代表とする大都市圏には手に入らないものはないとも言える。「オシャレなカフェ」も「高給な職業」、さまざまなステイタス。きらびやかな24時間眠らない都市生活など。地方の物産や食でさえも、逆に「東京」へと集まってくる。

しかし、昨年2月に首都圏在住の若者達から聞こえてきたことは、そんな恵まれた都市ならではの幸福感ではなく、変化が速く経済などの大きなうねりに左右され将来像が見通せない、閉塞感や将来への不安感であった。

それに比べて福井の若者達は、首都圏で暮らす若者が味わったり知ることができる体験や情報はないが、首都圏では忘れられてしまったような「家族との交流」「ゆとりのある時間」「気持ちの充実感」を感じており、将来に対する見通しは非常に前向きに思えた。

<首都圏グループ>

将来は楽しみ半分、不安半分。この先やっていけるのかなとか、ちゃんと企業に入れていい人生が送れるのかなという不安と、どうなるのか楽しみな部分とが半々くらい。

今の段階ではまだ全然将来が想像できない。学部が何をやってもいいというところなので逆に悩む。今はまだ何をしていいのか分からずに生活している状態。何が見えてくるのか楽しみと言えば楽しみだが。

2020年以降は就職が大変と先生から聞かされた。AIが人の職を奪うというのも先生から聞いた。

日本にいるから先端技術もあって刺激を受けやすい。30才になった時に日本が住みづらい国になっていたら自分が適する環境に自分が動けば良い。日本は先進国だが、先進国だからこそのストレスもある。

SNSでも何でもいろんな情報が簡単に入手できてしまう。人の裏側を色々知れってしまう時代。自分のこともよく分かっていないのに。だから自分に目を向けることが少なくなったのかなと思う。 世間で話題になっていることなんてどうでもいいと思う。時間がもったいない。不倫とか相撲とか。マジ関係ない。

<福井グループ>

福井は大好きな地元。便利といえば便利。どこからも遠いと言えば遠いが、中間地点だから名古屋も大阪も東京も九州や東北に比べれば行きやすい。

父が釣りが大好きで、自分も小学生の頃に始めて全部父から教わった。

人がやさしい、顔見知りが多い。

田舎過ぎず都会過ぎずちょうどいい所。

海に面している県だから夏は海水浴に行きやすい。

バスの運転手と友達になれる。寝過ごしそうになったら起こしてもらえる。

星がよく見える。

人がやさしい。


まとめ

これら福井在住の若者達の声に耳を傾けることで感じたのは、「東京」における『幸せのインフレ化』という概念であった。知識や経験でしか「幸福感」「満足感」が得られないとして、果たしてSNSやネットで流れてくる情報や人の経験談に振り回されることが「幸福感」につながるのだろうか。

実感しにくい幸福像の幻想に押しつぶされかねないのが、東京での都市生活のような気がしてならない。幸せの基準は人それぞれなのはずなのに、SNSという尺度を勝手に与えられ、自分自身が幸せを感じにくくなってしまっているのではないか。

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